活動レポート

令和5年度 定例総会 令和5年4月17日(月)

【記念講演会】

講 師:日本銀行 横浜支店 支店長 河西 慎 様

演 題:「最近の金融経済情勢について」

 

[講演概要]

1.2023年3月短観・景況判断の改善/悪化要因

[製造業]22年/12月短観⇒23年/3月短観

・供給制約の影響が緩和したことが改善要因↑となり、輸送用機械は▲12⇒0となった。

・原材料価格や電気代等の高騰による収益圧迫が悪化要因↓となり、電気機械は20⇒0、素材は▲12⇒▲17であった。

[非製造業] 22年/12月短観14⇒23年/3月短観12

・製造業の生産持ち直しが波及したことが改善要因↑となり、対事業所サービスが▲4⇒3となった。

・物価高に伴う節約志向の強まりが悪化要因↓となり、小売は4⇒▲4であった。

・人手不足による需要の取りこぼしが悪化要因↓となり、運輸・郵便は7⇒▲3、情報通信は46⇒38であった。

 

2.県内景気に関するポイント

足もとの県内景気は、持ち直し。

・「感染症」の影響ははっきりと和らいできている。「供給制約」の影響は、緩やかに和らいできている。

・コスト高に伴う企業収益の下振れから、景況感の改善は足踏みしている。

先行きも、景気回復が持続することが中心的見通し。

・設備投資は、高水準の収益が続くとの見通しのもと、3年連続で増加する計画である。

景気回復に向けた前向きなメカニズムは維持されている。

・先行き、供給制約と感染症の影響が一段と和らぐもとで、回復が持続することを想定している。

ただし、見通しを巡る不確実性(リスク)は引き続き高い状況である。

  • 海外経済(米・欧経済は軟着陸できるか、中国経済の成長は高まるか)
  • コスト高・物価高(価格転嫁は進められるか、需要は冷え込まないか)
  • 供給制約(各種部品の需給バランスは改善するか、人手不足等に伴うボトルネックは生じないか)
  • 感染症(変異種の再拡大による経済活動の停滞はないか)

 

3.海外経済の見通し等

・IMFの世界経済成長率予測は2022年の実績3.4%に対し、2023年は2.8%、2024年は3.0%である。これは過去の平均成長率(1980年~2022年)3.4%より低い。IMFは、下振れリスクが高く、ハードランディングリスクが高まったと述べている。

・日・米・欧のインフレ率は2022年にピーク(ユーロエリア10%以上、米国8%以上)となった。政策金利を2022~2023年に、FRBは9回連続の利上げ、ECBも6回連続の利上げを行った。異例の1回に0.75%の利上げも行っている。ただ2023年3月22日のFOMC声明及び議長会見では、インフレ率を2%の目標まで下げることに引続き強くコミットした上で、0.25%の利上げが適切と全員で判断したとして、利上げ姿勢を後退させた。FF金利先物からは、23年内に1%程度の利下げが予想される。

・2023年3月には、シリコンバレー・バンク(SVB)やクレディ・スイス(CS)の経営破綻が公表された。SVBはそのバランスシートから、負債サイドではベンチャー企業の大口預金等が2年で2.5倍に拡大し、資産サイドでは大半が満期保有目的の投資有価証券が4倍増になる等、特殊な銀行であったといえる。またCSは、スイスの大手銀行UBSと合併することで救済されており、リーマンショックのような金融不安は生じていない。ただ今後金融機関の貸出態度が慎重化することについては留意が必要である。

・為替については、昨年のような急激な円安が起きる状況ではないが、引き続き金融市場の振れが大きい状況にあるため留意が必要である。

・日本銀行の新総裁に植田和男氏が就任された(任期2023/4月~2028/4月)。初めて大学出身の方である。現在の日本銀行の金融政策の枠組みは、多少の手直しはあっても、緩和的金融環境を維持して経済を支えていくことが最優先の課題であろう。

 

4.中長期的な視点

・日本の実質GDP成長率は、1980年代~2000年代に大きく低下したが、2010年代には若干回復した。これには女性と高齢者(60歳~)の労働力人口の増加が寄与している。女性の労働参加率は、2021年にはG7諸国の中でも上位(約73%)にある。

・日本の平均賃金は、過去30年間ほとんど変化しておらず、2021年ではOECD加盟国の平均(約5万ドル)よりかなり低い下位のレベル(約4万ドル)にあり、有能な人材を確保しにくい状況にあるといえる。

以上

 

【定例総会】

本年度定例総会が17時よりハイアットリージェンシー横浜 20階Grand Ball Roomにて開催され、本年度会長には新たに大須賀 毅氏(株式会社丸眞 横浜支店長)、副会長には斉藤 昌喜氏(株式会社北原不動産 取締役部長)と山田 智也氏(有限会社エスク 代表取締役社長)が選任されました。また今年度の事業を推進する各役員も決定しました。

前年度事業報告・収支決算・監査報告、令和5年度事業計画・予算案の各説明があり、承認されました。

 

【懇親会】

定例総会、日本銀行横浜支店長・河西 様の記念講演会終了後、懇親会が開催されました。会場のハイアットリージェンシー横浜 20階 Grand Ball Roomは横浜港やベイブリッジが一望できる見晴らしのよい明るい会場でした。

 

まず神奈川県不動産のれん会の大須賀毅会長よりご挨拶がありました。そして山田智也副会長の乾杯の音頭で、懇親会がスタートしました。多くの参加者からご挨拶をいただき、斉藤昌喜副会長の音頭による締めで4月定例総会の懇親会は終了しました。