【新年講演会】
講 師:不動産経済研究所 取締役特別顧問 高橋 幸男 様
演 題:日米新政権後の日本の不動産マーケット
「講演概要」
・明日誕生する第2次トランプ政権では、米国に大型景気、バブル再発生、それによるドル高円安の可能性が大きい。日本では大企業と中小企業、富める人と富めない人の格差が拡大する。それにより不動産マーケットにおける二層化現象(都心・高額・富裕層向けは好調、郊外・低額・一般勤労者向けは低調)が極限まで進行するのではないか。そんな見通しを持っている。
・トランプ政権の政策は、選挙期間中の公約集アジェンダ47に骨格が見えており、税収増、支出減、再配分という3分類に集約できる。国家運営は税金を使った投資事業であるという姿勢が鮮明になっている。
・アジェンダ47の経済分野を整理すると、輸入品に高関税(インフレにつながる)、増えた税収分を減税(同)、製造業の復活と輸出増でドル高是正(同)、金利をコントロール下(低金利)に置く(同)、原油を掘って石油を大量供給(インフレを抑制する)となる。トランプ政権の経済政策はアベノミクスに大変似通っている。
・米国のFRBは24年9月に0.5%、11月7日に0.25%の利下げに転じた。以前は、22年の3月にコロナ禍の低金利政策から利上げに舵を切り、段階的に政策金利を挙げて、2023年の6月には5.5%までの高水準になり、その結果商業用不動産はノンリコース借款の支障で低迷した。また住宅ローン金利も上昇し一時は7%台の後半となった。米国の住宅取引の9割は中古住宅で、高金利により新たなローンを組めず住み続けた方が良くなり、市場に物件が出ず、住宅価格は高騰した。
・米国の株式市場(S&P500とダウ平均)は、急上昇している。相次いで米国の企業が出社命令を出すようになった。出社が促され、金利が低下すれば、商業用不動産も低迷を脱する。
・クレジット・デフォルト・スワップ(国債のリスクを測る指標)の保証料率がトランプ当選の日に低下した。トランプ政策を取れば財政負担は避けられず、米国国債の信用リスクが高まって、保証料率は上がるはずだが、反対に下がっている。マーケットは米国が財政危機に陥るよりも景気拡大の可能性大と見ている。
・おカネは自己増殖できるところ、勢いのあるところに集まってくる。米国に景気拡大がやってくれば、日本を含めて世界のおカネは米国に集まってドル高になる。米国は金利を下げ、日本は上げているので、普通は円高に振れるはずだが、今はそうなっていない。日本は本当に利上げを続けられるのか、という疑念がある。
・なぜなら、日本がデフレから脱却できているのかは微妙だからだ。「需給ギャップ(国の経済全体の総需要と供給力の差)」は、日銀が異次元金融緩和終了を決めた24年第1四半期はマイナス1.2%と下落幅が拡大した。需給ギャップがマイナスはデフレ状態、プラスはインフレ状態。需給ギャップを見る限り、まだ日本はデフレ状態から脱却していない。
・日銀が異次元金融緩和を終了したのは、賃金上昇が実現してきたことが理由。しかし日本の企業の9割以上を占め、従業員の7割以上を雇用する中小企業が連合の発表したような4%を超える賃上げを実現できていない。大企業でも、初任給を引き上げ若手社員に報いる給与体系は、実は賃金水準の高い働き盛り世代の給与減額によって賄われている。実際昨年度23年度の大企業の労働分配率は38.1%と過去最低を記録した。
・上場企業は利益を従業員に還元する前に株価対策、株主対策をやらなければならない。株価対策で最も手っ取り早い株価対策は自社株買いで、23年度は前年度比6%増の15・9兆円に上った。だから株価が上がっている。上場企業の株式は外国人が最も多く保有し、2023年度で31.8%(前年より1.7ポイント増)である。株価を上げろ、株主に還元せよ、が彼らの要求。利益が従業員に還元されない構造が出来上がっている。実際2023年度の大企業の労働分配率は38.1%と過去最低を記録した。
・金融緩和終了はイコール不動産ブームの終了、というのが私の持論で、歴史的に見てもこれは鉄板の法則だ。戦後の日本には5回の不動産ブームがあったが、金融緩和が行われたことでブームが発生し、金融緩和の終了でブームが去った。
・異次元金融緩和終了から10カ月近く経過しても、今のところ、過去のようなハードランディングにはなっていない。これは過去の金融緩和終了に比べて非常にマイルドだからである。住宅ローンの金利も上がっていない。不動産会社への融資も滞っていない。
・しかし変調の兆しが見える。その一つがリート指数の低迷だ。東証リート指数は、異次元金融緩和によって順調に上昇し、2024年3月19日(異次元金融緩和終了を日銀が宣言した日、リートの買入を正式に取りやめた日)から下げ基調が続いている。
・もう一つの変調の兆しが億ションの売れ行きである。勢いは鈍ってきている。アベノミクス以降の首都圏のマンション発売戸数が減り続けている。その理由は、まずプレーヤーが減り大手寡占状態になった。価格上昇で発売先送りの方が利益増である。その結果、発売戸数が後ずれして少なくなる。それが可能なのは異次元金融緩和による低金利が続いたからである。
・億ションは逆にどんどん増えた。2023年には4千戸台(シェアは15.5%)、昨年は、全体に占める億ションのシェアは15.8%だった。契約率は2023年実績では82.3%と、平均を12ポイント上回った。また価格が高ければ高いほど売れていた。2023年5月の契約率は1億円台が84.3%、2億円台が96.8%、3億円以上が97.2%だった。都心部・高額・富裕層向けの上層部が突出して市場を引っ張っていた。それが昨年から様相が少し違ってきた。
・その1年後の2024年5月の億ションの発売戸数が減った。1億円台が3割以上、2億円台が2割以上減って、3億円以上の住戸は4戸しか発売されなかった。売れ行きも初月の契約率は1億円台が47.4%、2億円台が36.7%、3億円以上が75.0%と2023年の5月に比べ、大きく落ち込んでいる。
・2023年5月と24年5月とで億ション立地の傾向が違ってきている。23年は都心に集中していたが、24年は23区内立地ではあるが、外周部に拡散している。24年上半期は低価格帯のほうが契約率は良くなっている。明らかに高値に対して天井感が出てきている。
・中古マンション市場で成約単価、新規登録単価、在庫単価の逆転現象が起きている。レインズのデータでは、埼玉・神奈川・千葉といった郊外部で成約単価が一番高くなっている。これは、新築マンションの発売が都心に集中しているため等により起きている現象と考える。
・住宅ローンの主流は40年ローン・50年ローンという超長期にシフトとしてきている。特に郊外マンションはそうなっている。変動金利で、30代前半の若い世代が多い。
・23年上半期と24年上半期の価格帯別の契約率で、23年上半期の契約率は高額帯のほうが高いが、24年上半期は低額帯の方が契約率は高くなってきている。
・富裕層は異次元金融緩和が終了してもいなくなるわけではないが、二層化の上層部分のマーケットは立地範囲が狭まる。それが億ションの売れ行きの変調となって表れてきている。
・異次元金融緩和終了の影響は目に見えては出ていないが、ブームの特徴だった二層化は極限の域まで達している。住宅ローンの変動金利が住宅ローンの税額控除率を上回る0.7%超になれば、より鮮明になると思う。
・郊外マンションや物流施設で、建築費の値上がりで土地のまま売ってしまうという事例が出てきている。
・このような状況を考えると、安閑とはしていられない。しっかりとアンテナを張ってマーケットの動向をウォッチしていくことが大切である。
以上
横浜モノリス(横浜市中区桜木町1-1-7ヒューリックみなとみらい17階)にて、
新年講演会・賀詞交歓会を開催しました。
会場は桜木町駅前のヒューリックみなとみらい17階で、テーブル席からも横浜港・みなとみらいが一望できました。
新年講演会後の賀詞交歓会では、鳶の方々による木遣(きやり)でスタートしました。
大須賀毅会長のご挨拶、吉田嘉一郎監事よりお囃子メンバー紹介がありました。
大須賀毅会長が会を代表して獅子舞の「厄落とし」を受ました。
お囃子の笛・太鼓の演奏の中獅子舞が披露されました。
また大黒天様に会員皆様の健康・商売繁盛を祈っていただきました。
その後、ゲストの方や多くの会員の方々からのご挨拶やトークが続きました。
最後は斉藤昌喜副会長の音頭による締めで新年会は終了しました。