新型コロナウイルスが神奈川県内の不動産市場に与える影響について
一般財団法人 日本不動産研究所 横浜支所 次長 和田 伸也様
一般財団法人 日本不動産研究所 横浜支所 主席専門役 丸山 隆之様
[講演概要]
1.一般財団法人 日本不動産研究所について
渋沢栄一氏の孫である渋沢敬三氏(日銀総裁、大蔵大臣)が日本不動産研究所の初代会長で、昭和34年に日本勧業銀行が担っていた不動産鑑定業務等を引き継ぎ不動産の総合調査機関として誕生した。
2.地価の状況(公的評価における指標等)
【地価LOOKレポート(国土交通省)】
高度利用地の動向を示す地価LOOKレポート(国土交通省)によると、神奈川県内7地点の令和2年4月1日~同年7月1日の変動は、「横ばい」が6地点、「0%~3%未満の下落」が1地点(元町)となっている。
【地価調査(神奈川県)】
コロナ禍の影響を一番受けた用途は商業地で、上昇から下落に転じるエリアもみられた。令和元年7月1日~令和2年7月1日の年間変動率でみると上昇のエリアについても、1年間をコロナ前とコロナ後で分けて捉えるとコロナ後はマイナスに転じているエリアが多い。
なお、令和2年7月時点の地価調査価格は、社会経済全体が大きく影響を受けた緊急事態宣言中を含めてコロナ禍の影響を強く受けていた可能性が高く、その後の不動産市場の変遷により土地価格がどのように推移しているか慎重な見極めが必要である。
3.現時点で確認できるコロナの影響(用途別)
【オフィス市場】
・直近の空室率はエリアによって上昇傾向にあるが、コロナ禍の前から決まっていた大型テナント退去等の影響もあるため、空室率上昇の原因と今後の展望を慎重に見極める必要がある。
・新規募集賃料はコロナ前の高い水準を維持している物件が多く、オフィス賃料に関して賃貸市場の悪化は顕在化していない。
・新規テナントの引き合いが減少傾向にあり、コロナ禍の影響を大きく受けている業種・業態がある点は留意する必要がある。
・賃貸市場、売買市場ともにリーマンショック時とは異なる動きを見せている。
・賃貸市場の動向を様子見する動きはみられるが、優良物件に対する取得意欲はある。物件価格を下げて売却する動きは、現時点でみられていない。
【住宅市場】
・緊急事態選言中は動きが止まったが、その後はマンション、戸建住宅ともに販売好調である。
・開発素地の取得意欲は高く、一部で慎重な見方をする事業者もみられるが、開発素地の価格についてコロナ禍による影響は現時点でみられない。
・投資用マンションについては、賃料収入の悪化は顕在化しておらず、投資家等による取得意欲は高い状況。
・個人投資家向けの小規模物件については、金融機関の融資姿勢が保守的であるため違う動き。
【商業施設】
・都心型商業施設については、緊急事態宣言中は営業休止となる店舗が多く、コロナの影響は甚大であった。緊急事態宣言後も、短縮営業を迫られるなど苦戦が続いている。
・業種によってコロナ禍の影響は特に顕著で、多くのテナントから賃料減額要望が出ている状況。
【郊外型商業施設】
・巣ごもり需要により、郊外型店舗のうち食品スーパー、ドラッグストア、ホームセンター等は売上げが上昇する店舗が多くみられた。一方で不要不急の商品については、売上げが大幅に落ちている。
・ドラッグストアなど郊外型店舗の開発は引き続き多くみられる。開発後の土地を賃貸借して、投資用不動産として底地を売却するケースも目立つ。
【ホテル】
・コロナ禍の影響を最も顕著に受けた。
・横浜市が公表している「横浜市内主要ホテル平均稼働率」によると、横浜市内の主要ホテル平均稼働率はコロナ禍の影響を受けて顕著に悪化し、2020年5月は20.9%であった。
・J-REIT保有物件に関する公表資料をみても、その影響は顕著である。
・一方で、観光以外の実需を取り込んで健闘するホテルも見られた。
[例会]
ホテル横浜キャメロットジャパン(横浜市西区北幸1-11-3)にて例会を開催しました。
令和2年3月より、新型コロナウイルス感染症防止のため中止・延期されてきた例会を、本年度初めて開催しました。
当会としての新型コロナウイルス感染症防止策も9月に決定して、それにそって開催されました。
講演会・懇親会の会場は通常開催する広さの2倍以上のゆったりとしたスペースを確保してソーシャルディスタンスも十分にとり、時間も短時間にして開催されました。
戸熊敦哉会長よりご挨拶、大須賀毅副会長の乾杯の音頭で懇親会がスタートしました。
その後、会員の方々からのご挨拶やトークで大いに盛り上がりました。最後は齋藤一郎副会長の音頭による締めで10月度例会は終了しました。
以上