作成者別アーカイブ: Norenkai

活動レポート

9月度例会(講演会&懇親会) 令和元年9月9日(月)

不動産企業による高齢者住宅事業の取り組みと今後の展望

 

 

 

 

 

 

 株式会社長谷工総合研究所 

 取締役 主席研究員 吉村直子 様

 

 

[講演概要]

1.高齢者住宅事業を取り巻く社会環境

・2019年8月1日時点で、総人口1億2,623万人、65歳以上3,583万人(28.4%)、75歳以上1,843万人(14.6%)である。65歳以上の人口はまもなく30%に達しようとしており世界1位である。また欧米に比して急激に高齢化比率が上昇している。

・「2025年問題」;団塊世代(S22年~24年生)が75歳以上に到達する。

・「2040年問題」;団塊ジュニア(S46年~49年生)が65歳以上に到達し、大都市部では、高齢者のみ世帯が急増する。また認知症患者数が800万人を超える。外国人材を受け入れたとしても、人材不足のため介護ビジネスを安定的に継続できるのかといった問題が想定される。

 

2.高齢者住宅市場の最新動向

・高齢者住宅・施設は、介護保険施設(特別養護老人ホーム等)、有料老人ホーム(介護付・住宅型・健康型)、賃貸住宅(サービス付き高齢者住宅等)等に区分できる。

・営利法人が事業者となれるのは、①有料老人ホーム、②認知症高齢者グループホーム、③サービス付き高齢者住宅(サ高住)等である。有料老人ホームは、介護保険制度が始まった2000年以降、またサ高住は「高齢者住まい法に」基づく登録制度が創設された2011年以降に急激に増加している。

・事業者が、高齢者を1人以上入居させて、ⅰ)入浴・排泄・食事の介護、ⅱ)食事の提供、ⅲ)洗濯・掃除等の家事、ⅳ)健康管理の少なくとも1つのサービスを提供していれば、利用権方式であれ賃貸借方式であれ、有料老人ホームとして都道府県等への届出が必要となる(ただし、分譲方式のシニア分譲マンションは対象外)。

・有料老人ホーム(介護付・住宅型)やサ高住は、9割方が要介護者向けであり、自立者向けが極端に少ない状況となっている。これは、介護保険制度が始まった2000年以降、大半の事業者が介護報酬に依拠したビジネスモデルを採るようになったためである。

・サ高住運営の上位事業者は、SONPOホールディングスグループや学研グループ、大手不動産企業やハウスメーカー等である。

 

3.高齢者住宅市場の今後と事業戦略

【シニア賃貸住宅】

・旭化成ホームズ等が手がける、サ高住登録しない高齢者向け賃貸住宅も拡大の兆しがあり、大半のサ高住が要介護者向けに偏る中、自立高齢者に訴求する商品として注目を集めつつある。「広め住戸+軽装備サービス」のスキーム以外にどのような斬新な商品提案があり得るのかを検討してみてもよいだろう。

【要介護者向けの住宅型有料老人ホーム・サ高住】

・ 介護人材不足の根本的な解決が容易ではない中、住宅型有料老人ホームやサ高住など“サービス外付け型”ビジネスモデルのオペレーションについてはかなりのノウハウを要することになり、安定的かつ持続的な経営のためのハードルは益々高くなるだろう。

【自立者向け有料老人ホーム】

 ・一時金方式を採るスキームの場合、2021年4月に強制適用される「収益認識に関する会計基準」の影響を大きく受けることになるため、注意が必要である。

・サ高住やシニア賃貸住宅等とも競合する中、このカテゴリーを手がける事業者は一部に限られるだろう。アッパー向け分野としてのみ存続するのではないか。

【要介護者向け有料老人ホーム】

・住宅型有料老人ホームやサ高住など“サービス外付け型”ビジネスモデルと同様、介護付有料老人ホームなど“サービス一体型”ビジネスモデルの特定施設事業でも介護人材不足は深刻な問題である。医療・介護保険制度の今後の改正動向も絡み、徹底した事業戦略の検討や見直しが必須となる。

・ 業界再編やM&Aは今後も継続するが、 シニア事業を全く手がけたことのない事業者が新たに参入するハードルは高い。 「既存の高齢者住宅・施設事業者を買収すれば、容易に市場参入できる」という見方は全くの誤りである。

・ シニア事業を自ら手がけたことがないような不動産企業であっても、開発・所有者としての関与はあり得るだろう。ただし、建物の賃借人となる優良な運営事業者を見極める選択眼が求められる。

 

以上

 

 

[懇親会]

馬車道駅近くの由緒にある横浜銀行協会(横浜市中区本町3-28)で例会を開催した。2F会議室にて役員会、3Fで情報交換会・講演会が行なわれ、その後2Fの大食堂で懇親会が開催されました。

情報交換会では、アットホーム株式会社・株式会社東京日商エステムの情報提供がありました。

 

 

懇親会では、まず戸熊敦哉会長よりご挨拶、大須賀毅副会長の音頭で懇親会がスタートしました。その後、多くの会員の方々からのご挨拶やトークで大いに盛り上がりました。最後は齋藤一郎副会長の音頭による締めで9月度例会は終了しました。